機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌による有熱性尿路感染症新生児・早期乳児へのフロモキセフの有用性

成相 昭吉1), 堀江 昭好1), 平出 智裕1), 小池 大輔1), 加藤 文英2)

1)島根県立中央病院小児科 2)同 新生児科


2016年4月から5月にかけて1歳未満の有熱性尿路感染症(febrile urinary tract infection:FUTI)症例を9例経験し,8例は基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrumβ-lactamase:ESBL)産生大腸菌が原因菌であった.6月以降,カテーテル採取尿で膿尿を認め,グラム染色でグラム陰性桿菌(GNR)を認めたFUTI小児例への初期抗菌薬をフロモキセフ(flomoxef:FMOX)とし(100mg/kg/day,分3で8時間ごと点滴静注),ESBL産生大腸菌が検出された血液培養陰性症例にはアメリカ小児科学会の推奨する最短期間である7日間投与することにした.
今回,2016年6月から2017年5月までに38℃以上の発熱を主訴に受診し入院となった日齢7~89の新生児・早期乳児で,白血球数・CRP値から細菌感染症を疑い,カテーテル採取尿で膿尿・GNRを認めFUTIと診断し,ESBL産生大腸菌が検出された11例を対象に,FMOXの有用性を検討した.
日齢は平均53日,受診病日は9例が第1病日,2例は第2病日であった.血液培養陽性例を2例認めた.FMOX初回投与後,体温が37.5℃未満に解熱するまでの時間は平均10.7時間で,全例3回目のFMOX投与前には解熱していた.血液培養陽性2例においても初回投与後7時間以内に解熱していた.
FMOXは,ESBL産生大腸菌によるFUTI新生児・早期乳児例への有用なカルバペネム系薬代替抗菌薬の一つになる.

Key words 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌, 新生児・早期乳児, 有熱性尿路感染症, フロモキセフ, カルバペネム系薬代替抗菌薬
連絡先 成相昭吉 〒693-8555 出雲市姫原4-1-1 島根県立中央病院小児科
受付日 2018年9月3日
受理日 2018年12月6日

小児感染免疫 31 (1):33─39,2019

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