機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

ムンプス小児例の迅速診断におけるLAMP法の有用性

後藤 研誠1), 西村 直子1), 高尾 洋輝1), 福田 悠人1), 吉兼 綾美1), 鬼頭 周大1), 春田 一憲1), 山口 慎1), 野口 智靖1), 竹本 康二1), 中山 哲夫2), 尾崎 隆男1)

1)江南厚生病院こども医療センター 2)北里生命科学研究所ウイルス感染制御


ムンプスの臨床診断はしばしば困難であるが既存の病原診断法は迅速性に乏しい.今回RT-LAMP法を用いて迅速診断を行い,病原診断例の特徴を示すとともに既存の病原診断法と比較した.
2013年9月から2014年8月の1年間に,耳下腺腫脹を主訴に当院を受診した小児51例から,初診時(平均2.4±1.4病日)の唾液を用いてRT-LAMP法およびRT-PCR法によるムンプスウイルスRNA検出とウイルス分離を,血清を用いてIgG/IgM抗体価測定(EIA)法を行った.ウイルス分離・RNA・IgM抗体のいずれかが陽性であった症例をムンプスと病原診断した.
病原診断されたのは23例(45%)のみであり,臨床診断の限界と病原診断の必要性が示唆された.各診断法の陽性率は,RT-PCR法96%(22/23),RT-LAMP法87%(20/23),EIA法78%(18/23),ウイルス分離61%(14/23)の順であり,RT-LAMP法はEIA法より感度が高かった.ウイルス分離,RT-PCR法,EIA法に対するRT-LAMP法の一致率はそれぞれ74%(17/23),83%(19/23),83%(19/23)であった.3例(13%)はワクチン接種後罹患であり,3例ともIgM抗体は陰性であった.RT-LAMP法は,侵襲性が少なく,迅速かつ高感度であり,ムンプスの病原診断法として有用である.

Key words ムンプス, 唾液腺腫脹, 迅速診断, 病原診断, LAMP法
連絡先 後藤研誠 〒483-8704 江南市高屋町大松原137 江南厚生病院こども医療センター
受付日 2018年6月4日
受理日 2018年12月4日

小児感染免疫 31 (1):27─32,2019

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