機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

遷延性発熱の原因が先天性皮膚洞感染症であった3例

新井 緑1), 張 慶哲2), 小川 優一1), 荒木 孝太郎2), 相澤 悠太2), 幡谷 浩史1), 堀越 裕歩2)

1)東京都立小児総合医療センター総合診療科 2)同 感染症科


先天性皮膚洞の発生頻度は2,500人に1人と言われており,6割が中枢神経感染症を契機に発見されたという報告がある.先天性皮膚洞感染症に続いて,皮膚洞に連続した腫瘍の感染や髄膜炎を起こすことで下肢の麻痺や膀胱直腸障害を合併することがあり早期診断が肝要となる.しかし,皮膚の所見は軽微なことがあり,診断が遅れることも稀ではない.われわれは遷延する発熱の原因が先天性皮膚洞感染症であった3症例を経験した.それぞれ症状出現から診断までに127日,32日,29日を要した.いずれの症例も皮膚所見が軽微であったり,被髪部に存在し発見が困難であったりしたため,先天性皮膚洞を想起して感染症の診断に至るのが困難であった.原因不明の遷延性発熱をみた場合には,先天性皮膚洞の感染症を鑑別の一つにあげ,背部正中軸に沿った皮膚所見を丁寧に診察することで早期発見の手がかりとなる.軽微でも皮膚の異常所見を認めれば,積極的に先天性皮膚洞の診断のための画像検査を進めることが重要である.診断した際には,速やかに抗菌薬治療とタイミングをみて外科的治療を行う.

Key words 先天性皮膚洞感染症, 脊髄腫瘍, dimple, 類皮嚢腫, 皮様嚢腫
連絡先 新井 緑 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター総合診療科
受付日 2017年11月27日
受理日 2018年4月24日

小児感染免疫 30 (2):145─151,2018

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