機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

熱帯熱マラリアと卵形マラリアの混合感染をきたしたギニア人女児例

木下 彩希1), 相澤 悠太2), 荒木 孝太郎2), 新井 真衣3), 堀越 裕歩2)

1)東京都立小児総合医療センター総合診療科 2)同 感染症科 3)公立福生病院小児科


マラリアは,熱帯・亜熱帯地域のアフリカ,アジア,南米などを中心にみられる蚊媒介感染症である.特に熱帯熱マラリアは重症化すると致死的となる可能性があり,かつ有効な治療薬があるため,渡航者発熱では必ず鑑別疾患にあげて除外する必要がある.今回,熱帯熱マラリアと卵形マラリアの稀な混合感染の症例を経験した.症例は4歳女児,発熱,嘔吐,下痢が16日間遷延し前医外来で経過観察されていた.渡航歴聴取を契機にマラリア感染が疑われ当院に転院となった.両親は西アフリカのギニア国籍で6年前に来日し,児は日本で出生した.入院3か月前にギニアに渡航し,滞在中マラリアに感染し治療されていた.迅速検査,血液ギムザ染色の結果から熱帯熱マラリアと診断し,アトバコン・プログアニルの内服を行った.さらに血液スメアで卵形マラリアを疑う原虫が観察され,血液PCRも陽性であり,卵形マラリアの混合感染が判明した.卵形マラリアの肝内休眠体に対してプリマキンによる追加内服治療を行った.マラリアは症状が非特異的であり,診断には詳細な渡航歴の聴取が重要である.また肝内休眠体への治療は異なるので注意が必要である.

Key words 熱帯熱マラリア, 卵形マラリア, 混合感染, 渡航歴, 小児
連絡先 木下彩希 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター総合診療科
受付日 2018年1月22日
受理日 2018年4月18日

小児感染免疫 30 (2):139─144,2018

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