─症例報告─
タンパク漏出性胃腸症を合併したYersinia enterocolitica腸炎の1歳男児
城戸内 健介1), 伊川 泰広1), 井上 なつみ1), 加藤 明子1), 谷内江 昭宏1)
1)金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
乳幼児期発症のY. enterocolitica(Y. ent)腸炎は下痢や嘔吐など胃腸炎症状を呈する軽症例が大部分を占める.一方で,重症の脱水症や敗血症など重篤な症状を認める症例もあり注意が必要である.今回,繰り返す嘔吐と水様性下痢便を主訴に受診し,血液検査で著明な低タンパク血症を認めた1歳男児を経験した.入院時から著明な低タンパク血症と低ガンマグロブリン血症を伴っていたことから急性胃腸炎以外の背景疾患が疑われた.便からY. ent(O : 8)が検出され,血清エルシニア抗体価の上昇も確認されたことからY. ent腸炎と診断した.便中免疫グロブリン値を定量したところ,著明なタンパク漏出が確認されY. ent腸炎に伴う二次性タンパク漏出性胃腸症と診断した.臨床経過の改善とともに便中免疫グロブリン値は低下し,血清総タンパク値は正常化した.Y. ent腸炎に二次性タンパク漏出性胃腸症の併発は稀ではあるが,本症例は病態を考える上で重要な症例と考えられた.また,低タンパク血症の鑑別や病勢把握を行う上で,継時的な便中免疫グロブリン値測定が有用であった.
Key words | Yersinia enterocolitica, タンパク漏出性胃腸症, 低タンパク血症, 便中免疫グロブリン値測定 |
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連絡先 | 伊川泰広 〒920-8641 金沢市宝町13-1 金沢大学医薬保健研究域医学系小児科 |
受付日 | 2017年9月28日 |
受理日 | 2018年4月12日 |
小児感染免疫 30 (2):121─126,2018
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