─原著─
小児侵襲性A群溶血性レンサ球菌感染症のemm型分析
大北 恵子1), 相澤 悠太1), 福岡 かほる1), 堀越 裕歩1)
1)東京都立小児総合医療センター感染症科
小児における侵襲性A群溶血性レンサ球菌(以下,GAS)感染症の臨床像とemm型の関連に関するデータは少ない.2010年4月から2017年3月までの期間に東京都立小児総合医療センターで診療を行った侵襲性GAS感染症について,年齢,性別,基礎疾患,診断,emm型,入院期間,抗菌薬感受性,予後を後方視的に調べた.16例の侵襲性GAS感染症を認め,13例でemm型分析が可能であった.emm型の内訳は,emm1.0が5例(31%),emm89が3例(19%),emm12が3例(19%),emm28が1例(6%),emm3が1例(6%)であった.診断の内訳は,化膿性関節炎5例(31%),膿瘍4例(25%),皮膚軟部組織感染症3例(19%),骨髄炎3例(19%),肺炎・膿胸2例(13%),腹膜透析関連腹膜炎1例(6%),カテーテル関連血流感染症1例(6%)であった.臨床像とemm型の間に明らかな相関関係は認められなかった.本研究におけるemm型は,本邦での溶連菌トキシックショック症候群調査の上位3つの型と一致した.現在開発中のワクチンはMタンパクを抗原として作られており,調査対象と数を拡大して本邦における侵襲性GAS感染症のemm型が明らかになれば,将来ワクチン導入に際して有効性の評価の基盤となるデータとなることが期待される.
Key words | A群溶血性レンサ球菌, emm遺伝子, Mタンパク, 侵襲性感染症, 小児 |
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連絡先 | 大北恵子 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター感染症科 |
受付日 | 2017年11月3日 |
受理日 | 2018年4月9日 |
小児感染免疫 30 (2):115─120,2018
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