機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

腹部症状を伴わず有熱性けいれんで発症したCampylobacter jejuni菌血症の1歳女児例と文献的考察

田中 俊光1), 笠井 正志2), 伊藤 雄介2), 田坂 佳資3)

1)兵庫県立こども病院総合診療科 2)同 感染症科 3)西神戸医療センター小児科


腹部症状のないCampylobacter jejuni(以下C. jejuni)菌血症症例を経験したので報告した.症例は1歳6か月女児.入院日の前日から発熱し,入院当日に全身強直性のけいれんを認め当院救急搬送となった.髄液検査から髄膜炎は否定的であったが,けいれん重積と遷延する意識障害のため,急性脳症を疑い治療を行った.入院6日目に入院時に提出した血液培養2セット中1セットからグラム陰性らせん菌が検出され,入院8日目にC. jejuniと判明した.患児は生肉や井戸水の摂取なく,動物との接触歴もなかった.入院経過中,腹痛や下痢等の腸炎症状は認めず,血液培養の結果判明時には既に解熱し特異的治療を要さなかった.C. jejuni/C. coliによる菌血症は本症例のように比較的予後は良好であることが多いが,重症例の報告もある.身体所見や病歴から本疾患を疑うことが困難な症例が存在することに留意するとともに,熱源不明の重症菌血症においては本疾患を念頭におき,小児であっても血液培養の複数採取は診断感度の上昇と適切な抗菌薬の選択のために推奨される.

Key words Campylobacter jejuni bacteremia, Japanese children
連絡先 田中俊光 〒650-0047 神戸市中央区港島南町1-6-7 兵庫県立こども病院総合診療科
受付日 2017年2月16日
受理日 2018年1月18日

小児感染免疫 30 (1):45─49,2018

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