機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

日齢90未満のヘルペス脳炎疑い症例に対する院内real-time PCR測定の有用性

鈴木 大地1), 庄司 健介2), 小山(若井)ちとせ2), 宮田 一平3), 岩瀨 徳康4), 宮入 烈2)

1)国立成育医療研究センター教育研修部 2)同 生体防御系内科部感染症科 3)川崎医科大学小児科学講座 4)大阪大学微生物病研究所


新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)脳炎疑い症例に対して投与開始されたアシクロビル(ACV)は,髄液中のHSV由来のDNAがPCR検査(HSV-PCR)で検出されないことをもって投与終了とすることが多い.HSVに対するPCR検査は一般的に院外検査機関で行われるため,結果が得られるまでに数日を要する.当施設では2009年に院内研究室でのHSVのreal-time PCR測定を開始した.2002年3月から2016年8月までの期間に髄液検体でのHSV-PCR検査が提出された日齢90未満の症例を対象とし,院内測定の有用性について検討を行った.対象患者を院外測定群と院内測定群に分類し,検査実施件数,検査結果判明までの期間,治療期間,入院期間を比較した.髄液HSV-PCR検査は118例で提出されており,院外測定は19例(16%),院内測定は99例(84%)であった.検査結果判明までの期間,ACV投与期間,入院期間はいずれも院内測定群で有意に(p<0.05)短かった(各々の中央値5.5日vs 1.0日,6.0日vs 2.0日,17.0日vs 8.0日).しかし,院内測定を開始した前後で検査実施件数は年間2.3件から14.6件に増加しており,検査を実施する閾値が低下していることが疑われた.院内PCR測定導入の有用性が示された一方で,適切な検査実施基準を検討する必要があると考えられた.

Key words 新生児ヘルペス感染症, real-time PCR, アシクロビル
連絡先 宮入 烈 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科
受付日 2017年9月21日
受理日 2017年12月22日

小児感染免疫 30 (1):3─9,2018

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