─原著─
小児病院における百日咳菌感染症
松平 慶1), 古市 美穂子2), 森川 和彦3), 堀越 裕歩2)
1)東京都立小児総合医療センター総合診療科 2)同 感染症科 3)同 臨床研究支援センター
百日咳菌感染症は,培養検査の感度が低く,血清診断はペア血清での評価が必要で時間を要することから,その診断が難しく,多くは臨床診断で治療が行われてきた.近年,遺伝子増幅法(PCR法,LAMP法)が導入され,従来の方法よりも多くの百日咳菌感染症が診断可能となったため,改めてその臨床像について後方視的に検討した.2010年3月から2015年3月までに当院において,従来の血清および培養検査に加え,遺伝子増幅法により診断した百日咳菌感染症は77名,月齢(中央値)は10.3か月,1歳未満が41名(53%)であった.臨床症状は,咳嗽を97%,チアノーゼを39%で認めた.百日咳含有ワクチン接種対象外である3か月未満21名を除いた56名のうち,36%が接種回数不足であった.各検査法の陽性率はPCR法が89%と最も高く,次いでLAMP法58%,抗PT-IgG抗体48%,後鼻腔培養28%であった.また,小児集中治療室へ入室した25名を重症群,その他を非重症群とし比較した結果,重症群で低月齢,低出生体重児,基礎疾患を有する児,百日咳含有ワクチン接種が遅れている児,チアノーゼが有意に多かった.重症化の可能性が考慮される児,3か月未満の児にはPCR法,LAMP法を含めた検査をより積極的に行う必要がある.
Key words | 百日咳, 乳児, 咳嗽, チアノーゼ, 遺伝子増幅法 |
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連絡先 | 松平 慶 〒100-1701 東京都青ヶ島村無番地 青ヶ島村国民健康保険青ヶ島診療所 |
受付日 | 2017年7月6日 |
受理日 | 2017年12月22日 |
小児感染免疫 29 (4):336─344,2018
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