機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第29巻第2号目次 > 抄録

─症例報告─

細菌性髄膜炎を発症した先天性内耳奇形の1例

大吉 由希美1), 大森 多恵1), 春日 悠岐1), 玉木 久光1), 伊藤 昌弘1), 三澤 正弘1)

1)東京都立墨東病院小児科
〔〒130-8575 東京都墨田区江東橋4-23-15〕


症例は11歳女児.先天性内耳奇形に伴う高度難聴があり,過去に2回無菌性髄膜炎での入院歴がある.入院前日に左耳の違和感があり,中耳炎と診断され鼓膜切開術を受けた.その後頭痛,嘔吐,発熱があり,当院救急外来を受診した.血液検査で炎症反応の上昇と髄液検査で細胞数と蛋白上昇,糖の低下を認め,細菌性髄膜炎の診断で抗菌薬治療を行った.血液培養検査と髄液培養検査から肺炎球菌が検出され,血清型は15Cと判明した.14日間の抗菌薬治療ののち,入院17日目に退院した.
先天性内耳奇形が基礎疾患にあり,反復性に細菌性髄膜炎を発症した症例は過去に多数報告されている.髄液漏の合併が原因といわれており,再発予防のため内耳充填術が行われる.内耳奇形における難聴の程度は軽度から重度のものまであるため,臨床的に難聴が指摘されていなくとも,細菌性髄膜炎をみた際は,積極的に内耳奇形の有無を検索すべきである.
また,本症例では肺炎球菌ワクチンは未接種であった.内耳奇形に伴う細菌性髄膜炎の発症リスクは高く,内耳奇形が指摘されている例では,肺炎球菌ワクチンの接種を推奨していくことが重要だと考えられる.

Key words 細菌性髄膜炎, 肺炎球菌, 先天性内耳奇形, Mondini奇形, 髄液漏
受付日 2016年9月20日
受理日 2017年4月21日

小児感染免疫 29 (2):153─159,2017

PAGE TOP