─原著─
当院の小児呼吸器感染症患者におけるHaemophilus influenzaeの薬剤感受性状況と背景因子
阿部 久瑠美1,2), 遠藤 美緒1,2), 川野 晋也3,4), 森田 孝次5,6), 水野 克己5,6), 渡邊 徹1,2), 佐々木 忠徳2)
1)昭和大学江東豊洲病院薬局 3)同こどもセンター小児外科 5)同こどもセンター小児内科
〔〒135-8577 東京都江東区豊洲5-1-38〕
2)昭和大学薬学部病院薬剤学講座 4)同医学部外科学講座小児外科学部門 6)同小児科学講座
2014年3月24日から11月30日に当院に入院し呼吸器感染症と診断された小児から分離されたHaemophilus influenzae(H. influenzae)56株を対象に,H. influenzaeの薬剤感受性とその背景因子を探索するために診療録より後方視的に調査した.また,背景因子として,年齢(3歳未満,3歳以上),同胞の有無,集団保育の有無,入院前2週間以内の抗菌薬使用の有無を調査した.
H. influenzae 56株でのβ-lactamase-nonproducing ampicillin-susceptible H. influenzae(BLNAS),β-lactamase-nonproducing ampicillin-intermediately resistant H. influenzae(BLNAI),β-lactamase-nonproducing ampicillin-resistant H. influenzae(BLNAR),β-lactamase-producing ampicillin-resistant H. influenzae(BLPAR)およびβ-lactamase-producing clavulanic acid/amoxicillin-resistant H. influenzae(BLPACR)の割合は,それぞれ17株(30.4%),12株(21.4%),17株(30.4%),4株(7.1%)および6株(10.7%)であった.β-lactamase非産生耐性菌(BLNAI+BLNAR)およびβ-lactamase産生菌(BLPAR+BLPACR)の割合は,それぞれ29株(51.8%),10株(17.8%)であり,当院は過去の報告と比較してβ-lactamase産生菌の割合が多い傾向にあった.BLNAI,BLNAR,BLPAR,BLPACRに対しMIC90が1μg/mL以下を示した薬剤は,ceftriaxone,cefditoren,ciprofloxacin,levofloxacinの4薬剤であった.
H. influenzaeが分離された56人において,入院前2週間以内の抗菌薬の使用の有無は,使用ありが25人(44.6%)であった.抗菌薬使用群では,BLNASの分離頻度が有意に低く,β-lactamase産生菌の分離頻度が有意に高かった.
H. influenzaeの薬剤感受性サーベイランスは,抗菌薬適正使用と耐性菌の増加防止のために重要と考えた.
Key words | 小児, Haemophilus influenzae, 薬剤耐性, β-lactamase産生菌, 背景因子 |
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受付日 | 2016年7月4日 |
受理日 | 2017年4月13日 |
小児感染免疫 29 (2):119─126,2017
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