─症例報告─
気管挿管を要した,ヒトコロナウイルスNL63による重症クループ症候群の一例
鶴岡 洋子1,2), 清水 博之2,3), 志賀 健太郎2), 蒲 ひかり2), 藤原 祐2), 渡辺 好宏2), 武下 草生子2), 七種 美和子4), 伊藤 秀一5)
1)国家公務員共済組合連合会横須賀共済病院小児科
〔〒238-8558 横須賀市米が浜通1-16〕
2)横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター
3)同 感染制御部
4)横浜市衛生研究所
5)横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学
患者は生来健康な1歳7カ月男児.発熱・呼吸困難を主訴に近医を受診し,急性喉頭蓋炎を疑われたため,当院に転院搬送となった.来院時気道閉塞の恐れがあると判断し,速やかに気管挿管を行った.その際,喉頭展開し直視下に観察したところ,喉頭蓋の腫脹は認めず声門下の著明な腫脹および狭窄を認め,クループ症候群と診断した.デキサメタゾン,フロセミド,スピロノラクトンの投与を行い症状の改善を試みたが,抜管までに16日間を要した.咽頭拭い液からヒトコロナウイルスNL63(human coronavirus NL63:HCoV-NL63)遺伝子を検出し,原因病原体と考えられた.
HCoV-NL63は2004年に初めて検出されたコロナウイルスで,クループ症候群と関連があることがこれまでに報告されてきた.コロナウイルスは軽症の気道感染症の原因ウイルスとして認識されることが多いが,ときに重症化することがある.本症例のようなHCoV-NL63による急速に進行した重症クループ症候群の報告は過去になく,今後のさらなる症例蓄積が望まれる.
Key words | ヒトコロナウイルス, HCoV-NL63, クループ症候群, 気管挿管 |
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受付日 | 2016年9月8日 |
受理日 | 2017年2月6日 |
小児感染免疫 29 (1):61─66,2017
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