機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

高CPK血症を伴い,筋炎が疑われたヒトパレコウイルス3型感染症の乳児例

本庄 紗帆1), 酒井 好幸1), 依田 弥奈子1), 堤 裕幸2)

1)市立函館病院小児科
〔〒041-8680 函館市港町1-10〕
2)札幌医科大学付属病院小児科


高CPK血症を呈したヒトパレコウイルス3型(human parechovirus type 3:HPeV-3)感染症の乳児例を経験した.症例は2カ月,男児.来院同日からの発熱,哺乳不良を主訴に当科に入院となった.血液検査では炎症反応の上昇は認めなかったが,CPK 909 IU/lと上昇を認めた.髄液検査,尿検査,各種ウイルス迅速検査では熱源となる異常所見を認めなかった.ウイルス感染症を疑い,補液のみで経過観察した.第4病日に解熱し,活気も出てきたため第7病日に退院した.哺乳不良,頻脈,網状チアノーゼなどの臨床所見,発熱の経過よりHPeV-3感染症を疑い,ウイルス分離を施行し,髄液検体よりHPeV-3が検出された.成人においては,HPeV-3感染症で流行性筋痛症を引き起こすことが報告されているが,小児領域においては現在までに5症例の報告のみである.血清CPK値上昇を伴う急性熱性疾患をみた際にはHPeV-3感染に伴う筋痛症,筋炎を念頭に置く必要があると考えられた.

Key words ヒトパレコウイルス3型, 高CPK血症, 筋炎
受付日 2016年6月30日
受理日 2017年2月2日

小児感染免疫 29 (1):55─60,2017

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