機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第29巻第1号目次 > 抄録

─症例報告─

結核菌未検出ながら臨床的に結核性髄膜炎と判断し抗結核薬治療が奏効した1例

棈松 貴成1), 丸山 慎介1), 小川 結実1), 荒武 真司2), 徳田 浩一3), 西 順一郎4), 河野 嘉文1)

1)鹿児島大学病院小児科
〔〒890-8520 鹿児島市桜ヶ丘8-35-1〕
2)指宿医療センター小児科
3)鹿児島大学病院医療環境安全部感染制御部門
4)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野


症例は1歳5カ月の女児.1歳2カ月時に機嫌不良,食思不振,微熱が出現した.1歳3カ月時と1歳5カ月時に嘔吐と右半身の間代性けいれんを認めた.当科転科2日前に実施した頭部MRI検査で水頭症を認め,緊急脳室ドレナージ・生検術が施行された.脳脊髄液検査では細胞数増加(236/μlリンパ球優位),糖減少(23 mg/dl),蛋白増加(817 mg/dl)を認めた.胸部X線・CT検査では異常所見はなかった.頭部造影MRI検査で,脳底槽に造影増強効果を認めた.側脳室壁の病理検査では類上皮細胞や多核巨細胞,慢性炎症細胞の浸潤を認めた.脳脊髄液の塗抹検査で結核菌は検出されなかったが,結核性髄膜炎を疑い,速やかに抗結核薬の投与を開始した.脳脊髄液の培養と結核菌の核酸増幅検査は陰性だったが,アデノシンデアミナーゼ(ADA)は40.0 U/lと高値だった.治療開始後は経口摂取が可能になり,全身状態が改善した.脳脊髄液の糖,ADAも正常化,造影MRIの所見も改善した.結核性髄膜炎では結核菌の証明ができない場合も多く,臨床所見で診断し速やかに治療を行う必要がある.

Key words 結核性髄膜炎, アデノシンデアミナーゼ, ADA, BCG, 水頭症
受付日 2016年11月10日
受理日 2017年2月2日

小児感染免疫 29 (1):49─54,2017

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