機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─症例報告─

頭蓋底骨折の1年半後に細菌性髄膜炎を発症した一男児例

杉浦 英恵1), 伊川 泰広1), 井上 なつみ1), 加藤 明子1), 黒田 文人1), 谷内江 昭宏1)

1)金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
〔〒920-8640 金沢市宝町13-1〕


近年,ワクチンの普及に伴い,細菌性髄膜炎に遭遇する機会が日常診療のなかで激減した.しかし,ワクチン接種後にもかかわらず細菌性髄膜炎を発症する症例があり,解剖学的異常や免疫不全症などの基礎疾患の存在が示唆される.基礎疾患を有することで細菌性髄膜炎を発症した症例は再発する危険性があり,細菌性髄膜炎が致死的疾患であることを考慮すると,初発時における基礎疾患の同定が重要となる.今回,頭部外傷時に髄液鼻漏を認め,その1年半後に肺炎球菌性髄膜炎を発症した4歳男児例を経験した.肺炎球菌ワクチン接種後の発症であることから基礎疾患の有無を精査し,頭蓋底に髄膜腔から鼻腔へ開通する瘻孔を同定し,頭蓋底修復術を施行し,閉鎖し得た.頭蓋底骨折の既往があり瘻孔が残存している症例では,受傷急性期のみならず遠隔期でも細菌性髄膜炎を発症した報告が散見される.受傷から長期間経過すると,頭部外傷の既往が明らかにされず精査されないため,再発を繰り返し重篤な神経学的後遺症を残し得る.ワクチン接種後にもかかわらず細菌性髄膜炎を発症した症例に遭遇した際は,基礎疾患の有無を入念に精査する重要性が示唆されたため報告する.

Key words 頭蓋底骨折, 髄液鼻漏, 細菌性髄膜炎, 脳槽シンチグラフィ, 肺炎球菌ワクチン
受付日 2016年9月12日
受理日 2017年1月31日

小児感染免疫 29 (1):39─47,2017

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