─症例報告─
水痘ワクチン接種者にRamsay Hunt症候群を発症した1例
武政 洋一1,2), 日馬 由貴1,2), 岡部 信彦2,3)
1)富士市立中央病院小児科
〔〒417-0048 富士市高島町40〕
2)東京慈恵会医科大学小児科学講座
3)川崎市健康安全研究所
〔武政洋一:現所属:東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科 〒277-0004 柏市柏下163-1〕
水痘ワクチン接種歴があり,明らかな水痘発症罹患歴がないにもかかわらず耳部帯状疱疹に伴うRamsay Hunt症候群(RHS)を発症した小児例を経験した.症例は13歳男児,回転性眩暈,右伝音性難聴を伴う耳部の帯状疱疹を認め,顔面神経麻痺を認めなかったことから不全型RHSと診断した.水疱内容液のPCRで野生株の水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が検出されたため,水痘ワクチン接種者において野生VZVの不顕性感染を生じ,野生VZVによる耳部帯状疱疹およびRHSを発症したものと考えられた.本症例はアシクロビル・プレドニゾロンの投与により後遺症なく治癒したが,RHSは永久的な顔面神経麻痺を残すこともあるので注意が必要である.わが国では2014年10月から水痘ワクチン2回接種法による定期接種が開始され,今後の水痘罹患の低下が期待されるが,現行の水痘ワクチンによる帯状疱疹の予防効果は明らかではなく,水痘だけでなく,同時に帯状疱疹のサーベイランスを行うことがVZV感染への理解・対策を行ううえで必要である.
Key words | 水痘帯状疱疹ウイルス, Ramsey Hunt症候群, 不顕性感染, 水痘ワクチン, ブレイクスルー水痘 |
---|---|
受付日 | 2016年6月20日 |
受理日 | 2017年1月23日 |
小児感染免疫 29 (1):24─28,2017
- 第36巻
- 第35巻
- 第34巻
- 第33巻
- 第32巻
- 第31巻
- 第30巻
- 第29巻
- 第28巻
- 第27巻
- 第26巻
- 第25巻
- 第24巻
- 第23巻
- 第22巻
- 第21巻
- 第20巻
- 第19巻
- 第18巻