機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第29巻第1号目次 > 抄録

─原著─

ロタウイルスワクチン公費負担がワクチン接種率やロタウイルス胃腸炎流行期の入院率に与える効果

佐藤 祐子1,2), 山木 ゆかり2), 梶野 浩樹2)

1)広域紋別病院小児科
〔〒078-8709 紋別市落石町1-3-37〕
2)網走厚生病院小児科


背景:当院周辺の3自治体で,2015年4~7月にかけてロタウイルス(RV)胃腸炎の流行が認められた.3自治体のうち,斜里町と小清水町がRVワクチン費用を公費負担しているのに対し,網走市は自費である.
目的:RVワクチン公費負担がワクチン接種率やRV胃腸炎流行期の入院率に与える効果を検証すること.
対象と方法:3歳未満の1,221人を対象とし,後方視的に調査を行った.RVワクチン接種率は各自治体や近医と協力して調査した.この地域では小児科入院施設が当院のみであり,胃腸炎に罹患した入院を要する小児は当科に入院するため,入院率は当科における入院数から計算した.
結果:ワクチン接種率は斜里町・小清水町のほうが網走市よりも有意に高かった(93.8% vs. 44.2%,p<0.001).RV胃腸炎による入院率は斜里町・小清水町のほうが網走市より低い傾向にあり(1.8% vs. 6.0%,p=0.13),ワクチン接種者のほうが非接種者よりも有意に低かった(0.7% vs. 6.0%,p<0.001).
結語:公費負担によりRVワクチン接種率が高くなり,ワクチン接種により入院率が減少した.したがって,公費負担はワクチンの集団免疫効果を強調すると考えた.

Key words ロタウイルスワクチン, ワクチン接種率, 入院率減少, 公費負担, 集団免疫
受付日 2016年10月24日
受理日 2017年1月30日

小児感染免疫 29 (1):17─23,2017

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