機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第28巻第3号目次 > 抄録

─原著─

古典的グレン術後に,肺カンサシ症を発症した先天性心疾患の一例

中尾 寛1), 古市 宗弘2), 宮入 烈2)

1)国立成育医療研究センター総合診療部
2)同 感染症科
〔〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1〕


先天性心疾患の術後でチアノーゼが残存する患者に,肺カンサシ症を合併した症例を報告する.症例は26歳男性で,右室型単心室症に対し2歳で古典的グレン手術を,16歳で中心シャント造設術を施行されている.17歳で感染性心内膜炎の既往がある.入院1年前からの湿性咳嗽,間欠的な発熱に対し近医で内服抗菌薬の処方が複数回なされ,改善しないため当院を受診した.胸部画像で右上葉に空洞性結節を認め,感染性心内膜炎や肺感染症を疑って当院に入院した.血液培養11セットはすべて陰性で,結核菌特異的IFNγ遊離検査も陰性であり,喀痰チールニールセン染色は陰性であったが,抗酸菌培養でMycobacterium kansasiiが陽性となった.肺カンサシ症の診断で抗結核薬イソニアジド,リファンピシン,エタンブトールの3剤併用治療を1年間行い治癒した.
 先天性心疾患の生存率上昇および非結核性抗酸菌感染症に対する診断の進歩から,先天性心疾患に合併した非結核性抗酸菌症の発見が増加する可能性がある.先天性心疾患の患者の呼吸器症状の鑑別診断には抗酸菌感染症も考慮する必要がある.

Key words 先天性心疾患, 非結核性抗酸菌, 肺カンサシ症, Mycobacterium kansasii
受付日 2016年3月16日
受理日 2016年6月27日

小児感染免疫 28 (3):153─158,2016

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