機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

機関誌「小児感染免疫」オンラインジャーナル > 第28巻第2号目次 > 抄録

─原著─

バーキットリンパ腫再発に対するリツキシマブを含む多剤併用化学療法後に播種性水痘帯状疱疹ウイルス感染症を発症し,後頭部可逆性白質脳症(PRES)を合併した一症例

尾曲 久美1), 舩越 康智1), 里 龍晴1), 岡田 雅彦1), 森内 浩幸1)

1)長崎大学病院小児科
〔〒852-8501 長崎市坂本1-7-1〕


症例は5歳女児.3歳時に水痘の既往歴あり.4歳時に発症したバーキットリンパ腫の再燃に対して,リツキシマブを含む多剤併用化学療法を施行した.化学療法から11日目に重度の白血球減少とともに発熱し,その後急激に呼吸不全が進行した.発熱と同時期にわずかな皮疹はみられていたが,17日目には全身に水疱を伴う紅斑が出現し,全血と水疱内容液からreal-time PCRで水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が検出された.高用量のアシクロビル投与を開始し,VZV viremiaのモニタリングを行った.17日間の人工呼吸器管理を含む集中治療により状態は改善し呼吸器を離脱したが,その翌日より意識レベルの低下と眼球偏位や顔面のぴくつきを認め,頭部MRI所見および臨床経過より後頭部可逆性白質脳症(PRES)と診断した.血圧とけいれんの管理により改善し,化学療法を再開後もPRESの再発はみられていない.
リツキシマブを含む化学療法後には,VZVの再活性化とその重症化に注意が必要である.また,その診断と治療にはVZV viremiaのモニタリングが有用であった.PRESの発症に直接関与したとは考えにくいものの,重症化したVZV感染による血管内皮障害がPRES発症の複数の要因のうちの一つとなった可能性も考えられる.

Key words 播種性帯状疱疹, リツキシマブ, バーキットリンパ腫, 後頭部可逆性白質脳症
受付日 2016年1月13日
受理日 2016年5月23日

小児感染免疫 28 (2):111─117,2016

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