─原著─
髄膜炎を伴った劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症の1例
田川 晃司1), 松井 克之1), 岸本 卓磨1)
1)滋賀医科大学小児科
〔〒520-2192 大津市瀬田月輪町〕
小児ではまれとされる劇症型溶血性レンサ球菌感染症(TSLS)の1例を経験した.症例は11歳女児.発熱から17時間後に意識消失し,前医に救急搬送された.前医搬入時は重症敗血症で,血液検査でWBC 7,500/μl,CRP 21.0 mg/dl,肝腎機能障害,DICを認め,髄液検査で多核球優位の細胞増多を認めた.搬入3時間後には敗血症性ショックに進展したため当院に転院し,集学的治療により回復した.入院時の髄液・血液培養からA群溶連菌(GAS)が検出され,GAS性髄膜炎とTSLSの合併と診断した.抗菌薬治療によく反応したが,髄膜炎によると考えられる高次脳機能障害を残した.GASによる髄膜炎はまれだが,TSLSを発症するリスクがある.定点当たりのA群溶連菌性咽頭炎の報告数が増加すると,TSLSの報告数も増加する傾向がある.GAS性髄膜炎もTSLSもともに予後不良の疾患であるため,適切な初期治療が必要である.A群溶連菌性咽頭炎の流行期に急速に進行する敗血症性ショックの患者をみた場合,TSLSの可能性も念頭に置き,早期に適切な初期治療を行う必要があると考えられた.
Key words | 劇症型溶血性レンサ球菌感染症, A群溶血性レンサ球菌, 細菌性髄膜炎, 小児 |
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受付日 | 2015年10月7日 |
受理日 | 2016年4月7日 |
小児感染免疫 28 (2):91─97,2016
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