機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

便中アデノウイルス抗原陽性胃腸炎入院例の臨床的検討―ロタウイルス胃腸炎との比較―

服部 文彦1), 西村 直子1), 日尾野 宏美1), 川口 将宏1), 武内 俊1), 堀場 千尋1), 後藤 研誠1), 細野 治樹1), 竹本 康二1), 尾崎 隆男1)

1)江南厚生病院こども医療センター
〔〒483-8704 江南市高屋町大松原137〕


2012年4月~2014年3月の2年間に当センターに入院した感染性胃腸炎患者のうち,便中アデノウイルス(AdV)抗原陽性患者28例とロタウイルス(RV)胃腸炎患者178例について,臨床像を比較検討した.RVワクチン既接種例は,AdV抗原陽性胃腸炎の2例のみであった.AdV抗原陽性胃腸炎は感染性胃腸炎入院例(478例)の6%であり,季節集積性を認めなかった.RV胃腸炎は感染性胃腸炎入院例の37%であり,その92%(164例)が1~5月に発生した.AdV抗原陽性胃腸炎の年齢は3カ月~8歳11カ月(中央値1歳4カ月),RV胃腸炎は生後20日~14歳8カ月(中央値1歳11カ月)であり,両者間に有意差はなかった.AdV抗原陽性胃腸炎/RV胃腸炎の主な症状の発現率(%)は,下痢100/100,発熱(≧37.5℃)89/97,嘔吐54/94(p<0.01),電解質異常25/24,ASTまたはALT高値21/51(p<0.01),BUN高値4/25(p<0.05),低血糖4/11であった.AdV抗原陽性胃腸炎では4例(14%)がけいれん発作,1例(4%)が腸重積症を合併した.RV胃腸炎ではけいれん発作を14例(8%)に認めたが,腸重積症は認めなかった.AdV抗原陽性胃腸炎の重症度はRV胃腸炎より低かったが,けいれん発作や腸重積症の合併には注意が必要である.

Key words アデノウイルス, ロタウイルス, 胃腸炎, ワクチン, 腸重積
受付日 2015年3月30日
受理日 2015年9月16日

小児感染免疫 27 (4):271─278,2016

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