機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

無莢膜型インフルエンザ菌による髄膜炎の4歳健常児例

武内 俊1), 西村 直子1), 日尾野 宏美1), 川口 将宏1), 服部 文彦1), 堀場 千尋1), 後藤 研誠1), 細野 治樹1), 竹本 康二1), 尾崎 隆男1)

1)江南厚生病院こども医療センター
〔〒483-8704 江南市高屋町大松原137〕


今回われわれは,無莢膜型インフルエンザ菌(non-typable Haemophilus influenzae:NTHi)による髄膜炎の健常児例を経験したので報告する.症例は4歳男児,これまでに免疫不全を示唆する既往歴はない.1歳4カ月時に,インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンを1回接種されている.発熱と頭痛が4日間続き,当院に入院となった.項部硬直があり,白血球増多,CRP高値および多核球優位の髄液細胞増多の検査成績から細菌性髄膜炎と診断した.入院翌日に,咽頭拭い液,血液および髄液培養からH. influenzaeが分離された.分離株の薬剤感受性はβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性であり,セフトリアキソンの12日間経静脈投与で後遺症なく治癒した.分離株の莢膜血清型は抗血清を用いた検査でNTと判定されたが,わずかに存在する莢膜の脱落したHibを否定できない.われわれはさらにPCR法による遺伝子検査を施行し,NTHiであることを確認した.
NTHiの病原性は低く,健常小児において髄膜炎を引き起こすことはまれと考えられている.しかし,Hibワクチンの普及に伴ってNTHiによる侵襲性感染症の増加が示されており,今後の動向に注意が必要である.

Key words インフルエンザ菌, 無莢膜型, 細菌性髄膜炎, Hibワクチン
受付日 2014年11月21日
受理日 2015年1月27日

小児感染免疫 27 (1):17─22,2015

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