機関誌「小児感染免疫」 オンラインジャーナル

抄録

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─原著─

A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の多施設解析:起炎菌の特徴と経口β-ラクタム系薬の治療効果

田島 剛1), 輪島 丈明2), 小山 哲1), 岩田 敏3), 生方 公子3), GAS surveillance study group

1)博慈会記念総合病院
〔〒123-0864 東京都足立区鹿浜5-11-1〕
2)東京薬科大学薬学部病原微生物学教室
3)慶應義塾大学医学部感染症学教室


咽頭・扁桃炎由来A群溶血性レンサ球菌(GAS)の疫学的特徴と経口β-ラクタム薬の治療効果を明らかにする目的で,クリニックを中心に「GAS surveillance study group」を組織した.2012年の対象期間中に,GASによる咽頭・扁桃炎と診断された434症例の初診時と薬剤投与後の咽頭拭い液が採取され,PCR法と培養法を併用して360株のGASが分離された.分離株に対するemm型別では,emm1型の頻度が最も高く,次いでemm12emm28emm89型の順であった.近年,原因菌としてのGASは,疫学的に著しく変化していることが示された.β-ラクタム系薬耐性菌は認められなかったが,分離頻度の高いemm型株にマクロライド耐性株が高い割合で認められた.治療薬は全例に対しβ-ラクタム系薬が用いられていた.投与薬の種類や投与方法の違い(分2あるいは分3)による臨床効果には有意差は認められなかった.しかし,経口セフェム系薬の分2での有効性の低い薬剤があった.上述した成績からは,GASにおける分子レベルでの疫学解析と抗菌薬感受性の検討が適切な抗菌薬選択のために必要であり,抗菌薬の投与条件についてもさらなる検討が望まれる.

Key words 咽頭・扁桃炎, A群溶血性レンサ球菌, emm型, 薬剤感受性, 治療効果
受付日 2013年10月15日
受理日 2014年1月23日

小児感染免疫 26 (1):31─40,2014

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