─原著─
悪性腫瘍患者に対するインフルエンザHAワクチンの有効性と安全性
大熊 和行1), 矢野 拓弥1), 中野 貴司2), 福田 美和1), 松村 義晴1), 荒井 祥二朗1), 中山 治3)駒田 美弘4), 神谷 齊2)
1)三重県科学技術振興センター保健環境研究部
〔〒512-1211 四日市市桜町3690-1〕
2)国立病院機構三重病院
3)三重県津保健福祉事務所
4)三重大学大学院医学系研究科
2000/01年のインフルエンザ流行期に三重県で急性リンパ性白血病などの悪性腫瘍患者に対するインフルエンザHA(hemagglutinin)ワクチンの有効性と安全性に関する調査を行った.調査対象者は,三重大学医学部附属病院小児科血液外来に通院中の悪性腫瘍患者のうち,ステロイド剤または免疫抑制剤による化学療法が終了し,基礎疾患が完全寛解状態にある年齢3~18歳の25人である.調査は,国立病院機構三重病院予防接種外来において,保護者の希望に応じて,ワクチン接種群と非接種群を設定して行った.また,調査項目は,属性,悪性腫瘍の種別,調査開始後1週間ごとの発病(発熱)状況,ワクチン接種前後の赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition:HI)抗体,免疫活動性(CD4/CD8比),ワクチン接種後48時間以内の副反応発現状況などとした.その結果,ワクチンの有効性を統計学的に有意な結果として示すことはできなかったが,発病指標の一つとして38℃以上の発熱が有用と考えられたこと,抗体産生はA/ニューカレドニアでは1回接種でも良好であったこと,免疫活動性(CD4/CD8比)は0.7程度以上あれば概ね良好な抗体産生がみられたことを明らかにすることができた.また,問題となるような重篤な副反応はみられなかったものの,1回接種後に副反応が発現した場合はこれらのことを保護者に十分説明したうえで2回目の接種を行い,接種後48時間は特に注意して経過観察する必要があることも明らかにすることができた.
Key words | インフルエンザ, 悪性腫瘍, ワクチン効果, HI抗体価, 副反応 |
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受付日 | 2006年9月20日 |
受理日 | 2007年1月5日 |
小児感染免疫 19 (1):9─18,2007
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