─原著─
1999/2000~2002/2003年の三重県における幼児に対するインフルエンザHAワクチンによるHI抗体産生と副反応
大熊 和行1), 松村 義晴1), 矢野 拓弥1), 杉山 明1), 中山 治1), 中野 貴司2), 神谷 齊2)
1)三重県科学技術振興センター保健環境研究部
〔〒512-1211 四日市市桜町3690-1〕
2)独立行政法人国立病院機構三重病院
1999/2000~2002/2003年の4シーズンにわたって行われた三重県における幼児に対するインフルエンザHA(Hemagglutinin)ワクチンの有効性と安全性に関する研究で得られた調査データをもとに,HAワクチン接種による赤血球凝集抑制(Hemagglutination Inhibition:HI)抗体産生状況と副反応発現状況についてワクチン株および接種回数別に総合的に検討した.その結果,A/北京/262/95(H1N1)とB/山梨/166/98の2株は,1回接種後より2回接種後のほうが良好な抗体価上昇を示し,A/ニューカレドニア/20/99(H1N1),A/シドニー/5/97(H3N2),A/パナマ/2007/99(H3N2),B/山東/7/97,B/ヨハネスバーグ/5/99の5株は2回接種後より1回接種後のほうが良好な抗体価上昇を示した.また,抗体価2管以上の上昇に影響する要因を単変量解析(Wilcoxon順位和検定,χ2検定)および多変量解析(多重ロジスティックモデル)により検討したところ,年齢(1歳児,2~5歳児)とワクチン接種前の抗体の有(10~20倍)・無(10倍未満)がかなり影響していることが明らかとなった.年齢については,1回目の接種では,1歳児よりも2~5歳児のほうが2管以上の抗体価上昇を良好に示し,2回目の接種では,1回目の接種とは逆に2~5歳児よりも1歳児のほうが良好な上昇を示した.また,ワクチン接種前の抗体の有・無については,1回目の接種では,抗体非保有者よりも既保有者のほうが2管以上の抗体価上昇を良好に示し,2回目の接種では,1回目の接種とは逆に抗体既保有者よりも非保有者のほうが2管以上の抗体価上昇を良好に示した.これらの結果から,1歳児はもとより,2~5歳児もワクチン接種は2回必要であり,2回接種によってもA/北京/262/95(H1N1)(2~5歳児),A/シドニー/5/97(H3N2)(1歳児),B/山東/7/97(1歳児,2~5歳児)のように感染防御水準とされる40倍以上に上昇する割合が50%にも満たない株があることも明らかとなった.しかしながら,ワクチン接種量(0.2 mL・0.25 mL)については,高用量群で良好な抗体価上昇が期待されたが,0.25 mL接種群の例数が少なかったためか両群間に有意差はみられなかった.
一方,副反応の発現状況は,各シーズン接種1回目,2回目ともに重篤なものはみられず,その発現率も概して一般的な程度であったが,1回接種後に全身副反応や局所副反応が発現した場合は,2回接種後はかなり高い割合(それぞれ25%,52%)で発現することが明らかとなり,1回接種後に副反応が発現した場合はこれらのことを保護者に十分説明したうえで2回目の接種を行い,接種後48時間は特に注意して経過観察する必要性が示唆された.
Key words | インフルエンザ, HAワクチン, 幼児, HI抗体, 副反応 |
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受付日 | 2006年3月24日 |
受理日 | 2006年6月10日 |
小児感染免疫 18 (3):239─254,2006
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